石井行政書士事務所

遺言相談・遺産相続

遺言相談

「遺言」とは

遺言とは法律で定められた方式によって作成され、法律で定められている事項について、遺言者の最終的な意思や希望を表したものをいいます。

[参照条文:民法960条・967条〜972条・976条〜979条]

法律に定められた方式

  • 普通方式
    自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言
  • 特別の方式
    死亡危急者の遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言

法律に定められている事項に関するもの

  1. 法定相続分と異なる相続分を定める
  2. 財産を相続人以外の第三者に遺贈する
  3. 遺産分割を禁止する
  4. 遺言執行者を指定する …など

遺言書の有無で変わる相続の流れ

遺言書の有り・無しで相続の流れは変わります。
家族を守るためにも、お早めの「遺言書」作成をおすすめします。

「遺言」と「相続」の関係

被相続人が死亡すると、「相続」が開始します。
被相続人が遺産承継について「遺言」をしていれば、法定相続よりも遺言が優先します。
そのような遺言がない場合には、法定相続となります。

[参照条文:民法960条・967条〜972条・976条〜979条]

遺言相続と法定相続の関係

遺言相続と法定相続では「遺言相続」が優先されます。
ただし、遺留分を侵害する遺言は、一部修正される場合があります。

「遺言」は、なぜ必要か

被相続人の意思を明確にしておくことで、相続の手続きをスムーズに行うことができます。
遺言がない場合は、相続人全員による遺産分割協議を行わなければなりませんが、多くのケースで協議中にもめることがございます。
遺言書を作成している場合は、相続手続が簡便で、遺言どおりに相続人が遺産を取得するので、相続人全員による遺産分割協議をする必要がありません。
遺産をめぐる手間や争いを未然に防止するという意味でも、遺言は効果的な手段となります。

「遺言」には、どのような方法があるか

大きく分けると、普通の方式と特別の方式があり、普通方式には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、特別の方式には「死亡の危急に迫った人の遺言」「伝染病隔離者の遺言」「在船者の遺言」「船舶避難者の遺言」の4種類があります。

[参照条文:民法967条〜983条]

自筆証書遺言

いつでも誰にでもできる最も簡単な遺言。
遺言者が自分で全文、日付、署名を手書きし、押印する。
※紛失や変造の危険と方式不備で無効になる恐れがある

証人 不要
印鑑 認印も可
保管 遺言者の保管
検認 必要

公正証書遺言

公正役場等で遺言者の口述内容を公証人が公正証書に記述。
遺言者および証人2人の署名、押印と公証人の署名、押印が必要。
※費用と手間はかかるが保管は確実で最も安心な方式

証人 2人必要
印鑑 遺言者は実印
証人は認印可
保管 原本は公証役場で保管
遺言者には正本と謄本が交付される
検認 必要

秘密証書遺言

遺言内容を死ぬまで秘密にしたいときに使う方式。
遺言者が署名、押印した遺言書を封筒に入れ、同じ印で封印し、公証人、証人の前に提出。
自己遺言なので、氏名や住所を申述し、封筒に遺言者、証人2人、公証人が署名、押印する。
※秘密保持は確実だが方式不備で無効になる恐れがある

証人 2人必要
印鑑 認印も可
保管 遺言者の保管
検認 必要

「遺言」を作成できる人

遺言は、15歳に達した人でしたら誰でも作成することができます。
ただし、遺言をする際に、「意思能力」があることが必要です。

公正証書遺言であれば…
① (自書はできるが)喋ることが困難な人
② 病気等により手が不自由で自署のできない人
③ 耳が聞こえない人
…でも、遺言はできます!

認知症になって判断能力がなくなってしまうと、原則として、遺言を残すことはできません。

※一時回復をした際に、2人の医師の立ち会いのもと、遺言書を作成することができるケースもあります。

[参照条文:民法5条・9条・13条・17条・961条〜963条・973条]

「遺言」によって、できること

遺言によって、できることは「相続に関すること」「財産の処分に関すること」「身分に関すること」「遺言の執行に関すること」などについてです。

「相続に関すること」について

遺言によってできる「相続に関すること」は主に以下の7つです。

  1. 法定相続分と異なる相続分を指定したり、その指定を第三者に委託すること
  2. 遺産分割の方法の指定をしたり、その指定を第三者に委託したり、遺産の分割を禁止したりすること
  3. 「遺贈」「贈与」を受けた人(=「特別受益者が」)がいる場合、「持戻し」を免除すること
  4. 相続人が遺産分割によって取得する財産に過不足がある場合、共同相続人の担保責任を減免したり、加重したりすること
  5. 推定相続人について、排除により相続権を失わせたり、排除を取り消したりすること
  6. 遺留分の減殺の方法を指定すること
  7. 系譜、祭具、墳墓などを承継してこれを守人(=「先祖の祭祀の主宰者」)を指定すること

[参照条文:民法781条2項・839条・848条・893条・894条・897条1項・902条1項・903条3項・908条・911条〜914条・964条・997条2項ただし書・1006条1項・1034条、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律153条2項、信託法3条2号、保険法44条・73条]

「財産の処分に関すること」について

遺言によってできる「財産の処分に関すること」は以下の5つです。

  1. 財産を第三者などに遺贈すること
  2. 相続財産に属さない権利の遺贈について、別段の意思表示をすること
  3. 一般の財団法人の設立のため、定款の記載・記録事項を定めること
  4. 信託を設定すること
  5. 保険金の受取人を変更すること

[参照条文:民法781条2項・839条・848条・893条・894条・897条1項・902条1項・903条3項・908条・911条〜914条・964条・997条2項ただし書・1006条1項・1034条、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律153条2項、信託法3条2号、保険法44条・73条]

その他の遺言事項について

「身分に関するもの」については、嫡出でない子を認知すること「未成年後見人」や「未成年後見監督人」を指定することがあります。
「遺言の執行に関すること」については、「遺言執行者」を指定したり、その指定を第三者に委託したりすることが挙げられます。そして、法的な効力はありませんが、遺言者の家族などに対する気持ちや希望、葬儀や献体のことなどを書き加える「付言事項」(法定遺言事項以外の遺言事項)があります。

[参照条文:民法781条2項・839条・848条・893条・894条・897条1項・902条1項・903条3項・908条・911条〜914条・964条・997条2項ただし書・1006条1項・1034条、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律153条2項、信託法3条2号、保険法44条・73条]

「遺言」の効力が生じる時期

遺言は遺言者の「死亡の時」から、効力を生じます。
ただし、遺言に停止条件が付けられたり、その条件が遺言者の死亡した後に成就した場合は、「条件が成就した時」から効力を生じます。

[参照条文:民法131条・985条]

「遺言」に関して、「変更」「撤回」をすることができるか?

遺言は、遺言者が遺言能力を有している限り、いつでも変更することができます。

遺言撤回・変更の基本的なルール
  • 自由な意思で何度でもできます
  • 遺言を変更する際は、破棄して新たな遺言書の作成となります。
    ゆえに、第2の遺言が撤回されても第1の遺言は復活することはありません。

    ※公正証書遺言については破棄の申請を行い破棄の手続きを行います。遺言書を物理的に破棄しても破棄とは認められません。

  • 複数の遺言書が同じ方式である必要はありません。
  • 複数の遺言書がある場合は接触する遺言のみ、前の遺言を撤回したとみなし、新しいものが適応されます。

[参照条文:民法1022条・1023条1項]

遺言作成の最初のステップ

遺言作成の第一歩は、自分緒財産を把握するために、「財産目録の作成」を行うことです。
財産目録を作成しておけば、相続開始後に、個人の財産を調査する手間が省けます。
まずは、相続財産(消極財産も忘れずに)のリストアップや、相続人リスト作成からはじめてみましょう。

遺言をすることができるケース、できないケース

夫婦で共同の遺言を残したい、身体的な障がいがある、成年被後見人である、病床に伏している…などの場合の、遺言をすることができる・できないをご紹介します。

夫婦が同時に一つの書面で遺言をすることはできるか?

遺言は、一人ひとりが別々に、書面で行わなければなりません。
したがって、夫婦であっても、同時に一つの書面で遺言をすることはできません。
仮に共同の遺言を作成しても、その遺言は無効となりますのでご注意ください。

身体的な障がいのある人が作れる遺言、作れない遺言

遺言の方式 自筆証書遺言 公正証書遺言
目が見えない人 ×
耳が聞こえない人
字を書くことが困難な人 ×
話すことができない人

「成年被後見人」は、遺言をすることができるのか?

通常、遺言を行うことはできません。
しかし、遺言の際に判断能力を回復し、遺言する能力があるときは、判断能力を回復していることを認める2人以上の医師の立ち会いのもと、遺言を行うことができます。

[参照条文:民法966条〜969条の2]

病院に入院、自宅で病床に伏している人は、遺言をすることができるのか?

病院に入院、自宅で病床に伏している人でも、字を書ける状態であれば、自筆証書遺言をすることができます。
また、字が書けない状態であっても、公証人に遺言の内容を伝えることができる人は、公正証書遺言をすることができます。

[参照条文:民法968条〜969条の2、公証人法17条・18条]

遺言の必要性が高い主なケース

  1. 夫婦に子供がいない場合
  2. 再婚をし、先妻の子と後妻の子がいる場合
  3. 長男(息子)の嫁に財産を分けてやりたいとき
  4. 内縁の妻(夫)の場合
  5. 個人で事業を経営したり、農業をしている場合
  6. 相続人が全くいない場合
  7. その他

遺言書の必要性チェックリスト














1つでもあてはまる方は、早めの遺言書作成をおすすめします。

遺言書を作成する時期

多くの方が「遺言書は自分の死期が近づいてから作成しよう」と、思われていることと思います。
しかし、実際はいつ何時、何が起こるか分かりません。
遺言は、愛する家族のために、自分に万一のことがあっても残された者が困らないように作成しておくべきものです。
財産が多い・少ないに関係なく、お元気なうちに、早めに作成することをおすすめいたします。
遺言は後に残される家族に対する最大の思いやりです。

遺言公正証書を作成するのに必要な資料

  1. 遺言者の印鑑登録証明書(作成後3か月以内)
  2. 遺言者の実印
  3. 遺言者と相続人の関係がわかる戸籍謄本(相続の場合:改正原戸籍謄本)
  4. 受遺者の住民票(遺贈の場合)
  5. 固定資産税評価証明書(または名寄帳)
  6. 預貯金通帳(または総額を書いたメモ)
  7. 証人(2人)の免許証の写し(適当な証人がいない場合は、ご相談ください)
  8. 証人(2人)の同行・証人(2人)の認印

遺言公正証書の手数料について

法律行為の目的の価額 金額
100万円以下のもの 5,000円
100万円を超え200万円以下のもの 7,000円
200万円を超え500万円以下のもの 11,000円
500万円を超え1000万円以下のもの 17,000円
1000万円を超え3000万円以下のもの 23,000円
3000万円を超え5000万円以下のもの 29,000円
5000万円を超え1億円以下のもの 43,000円
1億円を超え3億円以下のもの 43,000円に超過額5,000万円ごとに13,000円を加算した額

※このほかに、目的の価額の合計が1億円以下の場合は、1万1000円が加算され、また、正本・謄本作成料が概ね2000円程度かかります。

遺産相続

「相続」とは

ある人(=被相続人)が死亡した(死亡したとみなされるまたは認定された場合も含む)ときに、その人の財産に属した一切の権利・義務が、ある一定の人に承継される事を、一般に「相続」といいます。

[参照条文:民法882条・896条・915条1項・922条・924条]

「相続」の開始時期

「相続」は「被相続人」の「死亡の時」から開始します。

[参照条文:民法30条・31条・32条の2・882条、戸籍法89条]

「相続人」とは

ある人(=被相続人)が死亡した場合に、その人の財産に属した一切の権利・義務を包括的に承継する人をいいます。

[参照条文:民法3条1項・882条・886条〜893条]


※代襲者=子や兄弟姉妹が相続開始前に死亡したとき、相続欠格者であるとき、相続人を廃除されて相続権を失っているとき、その子や兄弟姉妹に代わって相続人となる次世代の子のこと。
※同時存在の原則=相続開始時に当該相続人が生存しえいること。胎児についてはすれに生まれたものをみなされる。

「内縁の妻」が相続することはできるの?

相続人は、法律上の届出を経て形成された一定の身分関係を持つ人に限られます。
「内縁の妻」は法律上、「内縁の夫」と婚姻関係にはありません。
したがって、内縁の夫が死亡した場合、その財産に関する一切の権利・義務を相続することはできません。

[参照条文:民法554条・887条〜890条・964条]

相続人になるケース、ならないケース

胎児 相続開始のとき、まだ生まれていない胎児
死産の時 ×
非嫡出子 母との関係において
認知されれば父との関係において
養子 養父母との関係において
実父母双方の関係において
離婚した元妻と子 元妻 ×
再婚した妻と連れ子 再婚した妻
連れ子 ×
内縁の配偶者 ×

「推定相続人」と「法定相続人」について

推定相続人とは、「相続」が開始する前において、相続が開始したときに相続人となるべき人をいいます。

「相続」が開始した後は「相続人」となり「推定相続人」とはいいません。
法定相続人とは、「被相続人」が死亡して相続が開始したとき、「被相続人の財産に属した一切の権利・義務を承継する人」として、法律で定められた人のことをいいます。

[参照条文:民法887条〜890条・892条かっこ書]

「相続人の欠格」について

「被相続人」などに対して、一定の事由に該当する行為を行った(または行わなかった)ために、「相続的協同関係」を破壊した相続人を、その被相続人との関係において、「相続権」をなくすことをいいます。

相続的協同関係の破壊
  1. 故意に被相続人、相続について先順位または同順位にある人を、死亡させて(または死亡させようとして)刑罰を受けた場合
  2. 被相続人が殺害されたことを知り、これを告発・告訴しなかった場合
  3. 詐欺・強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をしたり、その撤回・取消・変更をすることを妨げたりした場合
  4. 詐欺・強迫によって、被相続人に対し、相続に関する遺言をさせたり、その撤回・取消・変更をさせたりした場合
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を、偽造・変造・破棄したり、隠したりした場合

[参照条文:民法891条・965]

「推定相続人の排除」について

「一定の推定相続人」(遺留分を有する推定相続人)が被相続人を虐待したり、重大な侮辱等を加えたりしたとき、または一定の推定相続人に著しい非行があったときに、被相続人が家庭裁判所に請求して、その推定相続人の相続権を失わせることをいいます。

[参照条文:民法892条・893条、家事審判法9条1項乙類9号・17条・18条・26条]

「相続財産」とは

相続財産には、不動産、有価証券、預貯金、貴金属類、動産などの権利のほか、借金、買掛金などの債務があります。

[参照条文:民法896条]

「祭祀財産」について

お墓や仏壇などの祭祀財産は、その性質上分割して承継されることはなく、相続の対象にはなりません。
したがって、「相続財産」には含まれず、相続はされません。

[参照条文:民法897条]

祭祀財産はどうなるのか?

祭祀財産の所有者である被相続人が遺言などで指定した人がいるときにはその人が「祭祀主宰者」として祭祀財産を承継します。
これを「祭祀主宰者の指定」といいます。
祭祀主宰者の指定がなかった場合は、その地方の慣習にしたがって祭祀を主宰する人がなります。
被相続人による指定もなく、また慣習も明らかでないときは、家庭裁判所が定めた人に承継されます。

相続人が数人いる場合

相続人が数人いるとき、「相続財産」はその数人の共有となります。

[参照条文:民法898条・899条]

例えば下の図の家族の場合、妻と子供たち全員がその相続分に応じて遺産を共有します。

「法定相続人の相続分」について

法定相続人の相続分については、下記のようになります。

相続人 法定相続分 留意点
配偶者と子の場合 配偶者:1/2
子:1/2
①子が数人あるときは、相続分は均等(頭割り)となる。
②非嫡出子の相続分は、嫡出子の相続分の1/2となる。
配偶者と直系尊属の場合 配偶者:2/3
直系尊属:1/3
直系尊属が数人あるときは、相続分は均等(頭割り)となる。
配偶者と兄弟姉妹の場合 配偶者:3/4
兄弟姉妹:1/4
①兄弟姉妹が数人あるときは、相続分は均等(頭割り)となる。
②父母の一方を同じくする兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟姉妹)の相続分の1/2となる。

[参照条文:民法900条]

「特別受益者」とは

特別受益者とは被相続人から「遺贈」をうけるか、生前に「贈与」を受けた相続人のことです。

[参照条文:民法903条]

「特別受益者」の相続分について

被相続人の財産の価額に、「特別受益者」が「生前贈与」を受けた価額を加えたものを「被相続人の相続財産」とみなします。
これを基礎として、特別受益者の相続分を算出し、「算出された相続分」から「贈与や生前贈与を受けた価額」を控除した残額が、特別受益者の「具体的相続分」となります。
なお、遺贈や生前贈与を受けた価額が、算出された相続分の価額を超えているときは、特別受益者の具体的相続分はありません。
必ずしも遺った遺産を相続分どおりに分けるのではありません。

[参照条文:民法903条]

特別受益者の「具体的相続分」の計算方式

被相続人の財産と特別受益者が生前贈与を受けた価額を足した額(みなし財産)基礎にして、特別受益者の本来の相続分を算出します。
そこから遺贈や生前贈与を受けた価額を引いた額が特別受益者の具体的相続分となります。

「寄与分」とは

共同相続人のうち、被相続人の事業を手伝ったり、その事業に財産を提供したり、被相続人の療養看護(※1)に努めるなどの貢献によって、被相続人の財産を維持・増加させることに、特別の寄与をした人がいる場合、その「寄与した額」を寄与分といいます。

(※1)扶養義務を超えた著しい程度の監護療養に限ります。単なる看護程度では認められません。

[参照条文:民法904条]

「寄与分のある人」(=「寄与者」)の相続分について

被相続人の「相続財産」に価額から「寄与分」を控除したものを相続財産とみなし、それを基礎として寄与分のあり相続人の相続分を算出します。
それに寄与分を加えたものが、「具体的相続分」となります。

[参照条文:民法904条の2]

寄与相続人の「具体的相続分」の計算方式

被相続人の財産から寄与分を引いた額(みなし相続財産)を基礎にして、本来の相続分を算出します。
それに寄与分を足した額が具体的相続分となります。

「遺産の分割」はどのような方法で行われるか

遺産の分割は「当事者の協議による分割」「家庭裁判所の調停または審判による分割」「遺言による指定分割」の三つの方法があります。

[参照条文:民法906条〜908条]

「遺産の分割」の具体的なやり方

遺産の分割には主に4つの方法があります。

現物分割 財産をそのまま分割する
代償分割 共同相続人の1人(または数人)に遺産をを取得させ、取得者がその代償として、ほかの相続人に対して債務を負担する
換価分割 金銭に換価し、その価額を分割する
共有とする方法 現物分割や換価分割とすることなく、遺産の全部(または一部)を共同相続人の共有とする

[参照条文:民法249条〜262条・898条・906条、家事審判法15条の4、家事審判規則109条]

「遺産の分割」について、遺言することはできるの?

遺産は、遺言によって分割方法の指定をしたり、分割方法の指定を第三者に委託したりすることができます。
また、遺言で遺産分割を禁止することができます。

[参照条文:民法908条]

共同相続人中に認知症の人がいる場合、遺産分割協議はどのように行われるか

共同相続人中に認知症の人がいる場合は、「法定後見人制度」(※1)を利用します。
家庭裁判所に対して「後見等開始の審判の申し立て」(※2)を行えば、後見人など(補助人・保佐人・後見人)が選任されます。そして、それらの人が認知症の人の代わりに遺産分割の協議に参加し、本人の意思を表示して協議を成立させます。
なお、任意後見契約により、任意後見人に遺産分割協議の代理権が与えられ、かつ、任意後見契約の効力が発効していれば、当該任意後見人が認知症の人の代わりに遺産分割協議に参加し、協議を成立させます。

(※1)精神の障害によって判断能力が不十分なことから、契約などをする際に意思決定が困難な人に対し、後見人などがその判断能力を補う制度

(※2)家庭裁判所に後見人などを選任してもらうために、本人、配偶者、4親等内の親族などがするもの

[参照条文:民法7条〜17条・843条〜847条・876条〜876条の10任意後見契約に関する法律2条]

「相続の単純承認」とは

相続の単純承認とは相続人が被相続人の相続財産について、債務も含め、すべてを引き継ぐことを承認し、その意思表示をすることをいいます。
◆相続人の一定の行為等により単純承認をしたものとみなされる場合

  1. 相続人が、相続財産の全部(または一部)を処分したとき
  2. 相続人が、相続の開始があったことを知ってから3か月以内に、相続の限定承認(または相続の放棄)をしなかったとき
  3. 相続人が、相続の限定承認(または相続の放棄)を行った後に、相続財産の全部(または一部)を隠したり、私的にこれを消費したり、許されないことであると知った上で相続財産をその目録中に記載しなかったとき

[参照条文:民法866条・920条・921条]

[参考判例:大判大正9・12・17民録26輯2043頁]

「相続の限定承認」とは

相続の限定承認とは、相続人が、相続により承継する財産の範囲内で、被相続人の債務や遺贈の義務を負担し、承継する財産を超える義務などの責任を負わないということを保留して、相続を承継することをいいます。
つまり、積極財産を承継した限度において消極的財産を負担(借金を弁済)し、結果的に財産が残ったらその分を負担するということです。(※1)
これは、被相続人の財産に属した一切の権利義務を無条件で承継する「相続の単純承認」とは異なります。

(※1)相続が開始したことを知ったときから3か月以内に、相続財産の目録を作成し、家庭裁判所に「限定承認をする旨の申述」が必要です。

[参照条文:民法896条・922条〜924条・927条・929条〜931条、家事審判法9条1項甲類26号、家事審判規則114条]

「相続の放棄」とは

相続の放棄とは、相続開始後に、相続人が相続しない意思を表示することをいいます。
相続の放棄をすると、無条件に相続財産を放棄することになります。

[参照条文:民法915条1項・938条・939条、家事審判法9条1項甲類29号、家事審判規則99条1項114条]

「相続の放棄」をする場合の手続きや効果について

「相続の放棄」に関する手続きは、相続が開始したことを知ってから3か月以内に、家庭裁判所に申述しています。
相続の放棄の効果は、相続を放棄した人が、その相続に関し、最初から相続人とならなかったものとみなされることです。

[参照条文:民法915条1項・938条・939条、家事審判法9条1項甲類29号、家事審判規則99条1項114条]

要件 ①3か月以内に家庭裁判所へ申述(他の相続人がいても単独でできる)
②財産の全部についてしなければならない
効果 最初から相続人とならなかったものとみなされる。
したがって、その人の代襲相続は起こらない。

被相続人の生前に、「相続の放棄」をすることはできるの?

相続の放棄は、相続人が相続の開始したことを知ってから3か月以内にしなければならないので、被相続人の生前にすることはできません。
生前に相続を放棄する趣旨の念書などを取り交わしても、それ自体法的な効力はありません。
ただし、遺留分に関しては、被相続人の生前でも、家庭裁判所の許可を受ければ、放棄することができます。

[参照条文:民法915条1項・1028条・1043条]

相続登記をする際に求められる「相続分がないことの証明書」とは

共同相続人の中で、被相続人からその相続分を超える特別の利益を受けた人が、被相続人の財産である不動産について、ほかの共同相続人が自己を所有者とする相続による所有権移転登記手続きをするとき、法務局に提出する証明書のことです。

[参照条文:民法903条2項]

「相続人の不存在」の場合の相続財産のゆくえ

「特別縁故者」がいて、財産を分与するのが相当であると家庭裁判所が判断したとき、その人に財産が分与されます。
それでも財産が遺った場合、この分は国庫に帰属します。

[参照条文:民法951条〜953条・955条〜959条]

「特別縁故者」について

特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた人、被相続人の療養看護に努めた人、そのほか被相続人と特別の縁故があった人をいいます。

  1. 生計をおなじくしていた人
    親族や親族に準ずる人(内縁の配偶者、同居していた叔父・叔母、先に死亡した子の妻など)
  2. 療養看護に努めた人
    実際には「被相続人と生計を同じくしていた人」と重複する場合が多いが、知人、隣人、家政婦、ケアマネージャー、民生委員などで被相続人の療養看護に努めた人
  3. 特別の縁故があった人
    被相続人との間に生活上、実際に交流があったことが必要。
    たとえば、被相続人の生活の援助をしてきた人、生活の世話をしてきた人など。
    また、地方公共団体、宗教法人、社会福祉法人といった法人などでも、被相続人と生活上、交流があった場合は、該当

[参照条文:民法958条の3]

「特別縁故者」に対する相続財産の分与の流れ

「相続人の不存在」が、確定してから3か月以内に、家庭裁判所に対して「特別縁故者」が「相続財産分与の申し立て」を行います。
その後、家庭裁判所が、特別縁故者の有無、特別縁故者の年齢、職業、相続財産の内容・状況を考慮した上で、相続財産の分与を認めるかどうかを判断します。

[参照条文:民法958条の3、家事審判法119条の1〜119条の5]

「遺留分の算定の基礎となる財産額」や遺留分権利者の「遺留分の額」「遺留分侵害額」の算出方法

①遺留分の計算の基礎となる財産額の計算方法

②各遺留分権利者の遺留分額の計算方法

③遺留分侵害額

[参照条文:民法1029条・1030条・1044条・903条・904条]

「遺留分の減殺請求権の行使」とは、どのようにして行うか。またその効果


◆遺留分が侵害されていることを知った時から1年以内
◆相続開始後10年以内

[参照条文:民法1031条・1042条]

「遺留分減殺の順序」について

  1. 遺贈・贈与が複数あるとき
    遺贈に対して減殺請求。なお、全額回復できない場合に贈与に対して減殺請求
  2. 遺贈が複数あるとき
    遺贈された財産お価格に応じて減殺。1,000万円の遺贈を受けた者と500万円の遺贈を受けた者がある場合に、300万円の減殺請求をする場合は、前者に対して200万円、後者に対して100万円の減殺。
  3. 贈与が複数あるとき
    後の贈与、すなわち、相続開始の時点に最も近い時期にされた贈与から始めて、順次前に遡って減殺。
    一番最後の贈与を減殺して全額取り戻しても、なお、完全に回復するに足りない場合に、その前にされた贈与を減殺。完全に回復するまで順次遡って減殺。

[参照条文:民法1033条〜1035条]

遺言信託

遺言信託も承っております。残された遺族の皆様が揉めないよう、生前からのご準備をお勧めいたします。

制度の概要は下記サイトをご覧ください。
一般社団法人 家族信託普及協会

成年後見制度

成年後見制度とは、介護保険制度とともに平成12年4月に発足された制度です。
社会生活においてさまざまな契約や遺産分割などの法律行為をする場合に、判断能力が不十分なため(認知症や知的障がい、精神障害など)、悪徳商法などの被害に遭う可能性がある人に対して、家庭裁判所に任命されるなどした後見人が本人のために財産管理等を行う制度です。

制度の概要は下記サイトをご覧ください。
成年後見センターNPO法人 あい愛サポートセンター
一般社団法人 コスモス成年後見サポートセンター

 

初回相談無料です。お気軽にご相談ください。

ご相談・お問い合わせ

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